リカバリーの旅日記 ~On The Road~

第2回 2018年尼崎「再会」

増川ねてる氏

[アドバンスレベルWRAPファシリテーター/
NPO法人東京ソテリア・ピアサポーター(東京都江戸川区)]

研修会


旅。
何が起こるかわからない…道の上。
出会いや、発見、怪我、病気。そして続いていく、私の人生。
15歳で突然始まった、強い「眠け」と「明晰夢」。19歳で知った「ナルコレプシー」。「現代医学ではもう限界です」言われた著者が、
精神科医療の周辺を30年以上巡り続けて44歳になった現在、
見聞したこと。語りたいこと。
メンタルヘルスのリカバリーと、旅日記。


(承前)

そして、
その日の夜、明け方でしたか…
僕は、枕もとで聞こえる ぶーーーーん ぶーーーーーん という音に、目を覚ましました。最初は、「気のせい?」 「夢でもみているのかな…」 って思っていました。
僕には、そういうところがありますから…

ぶーーーーーん ぶーーーーーーーん

しかし、その音は明らかになっているようで、かつ、振動もしているように思います。ホテルの一室、暗い部屋。ちょっと面倒だな思いながらも、体を起こして枕もとをごそごそしてみると、
音の正体がわかりました。
それは、「スマートフォン」。充電器に繋がれたスマートフォンンが、ぶーーーーん ぶーーーーーん っていっていたのです。なんだなんだとみてみますが、特に電話が鳴っている訳でなし、アラームが鳴っている訳でもなく…
少し慌てましたが、充電器を外し、電源を落とすと静かになったので、、そのまま寝ました…

・・・

そして、
翌朝、スマホの電源を入れてみたら…
起動しない!!

壊れていたのです。

尼崎、1月24日。
これは、困りました。というのは、その日の「ピアサポーターステップアップ研修」の会場がわからない。紙に印刷して持ち歩くということをしなくなってもうずいぶんと経っています。ファイルをダウンロードしないで、その都度その都度、メールで検索かけて、情報を取るようになって少し経っています。ポータブルWi-Fiをやめて、スマホのテザリングでネットに入るようにしているので、、ことごとくが、スマホの電源が入らないのは、致命的。
そして、先方に電話しようにも、電話番号もスマホのなか
(そういえば、いつからなのでしょう。人の電話番号を覚えなくなったのは。電話帳を、手書きしなくなったのは…。今は、もうすべてがスマホのなか…)

まいりました。
じっとしていても仕方がないので、フロントに降りていき…
(こういう時、…予期しないトラブルがあった時、「あーどうしよう。もうダメだ」ってなって天井をみて、寝ちゃうのではなく、
気分を変えて、すぐに動く!ってなったのは、いつからだったか? ここ最近のことのような気がしています… そして、最近は、それで前進できるようになって来たようです。)

じっとしていても仕方がないので、フロントに降りていき…

「あのー、すみません。この辺にDOCOMOショップはありませんか?」
「お調べします。」

「ありましたよ」
「ここからどれくらいですか?」
「歩いて、15ふんくらいでしょうか?」
「混んでいますかね…?」

例えば、東京、僕が行くDOCOMOショップ、1時間待ちは当たり前で、2時間近く待つことも、、、。

「どうですかね。聞いてみましょうか?」

とても親切な対応をフロントの方はしてくれます。
「15分待ち位でいけそうですよ。まだ、朝ですし、開店したばかりで、そんなに人はいないようですよ」

「ありがとうございます。場所を教えて下さい。
すぐに、行ってきます」

・・・

それで、スマホをみてもらい、
シムカードを新しくしたりして。起動するようになり。
わかったのは、水が中に入ってしまっているということ。

「もしかしたら、また具合悪くなることあるかも知れません…。ここのところ、ここがピンク色になっていますよね。水が入ったということなんです」

「そうですか。でも、助かりました。ありがとうございます!!」

・・・

DoCoMoを出ると、
すぐにその日の会場の確認をし、
やり取りをしていた主催者の方に電話をかけ、
その日の仕事が出来るように準備をしました。そして、ホテルに帰り、スーツケースを受け取り、さて、今日の会場に向かおう!
と、またホテルのフロントの人に、道を尋ねると…

会場は、
なんとさっきまで言っていたDoCoMoの100メートル位のところでした。僕は、さっきよりも心軽く、さっきほど急ぎ足ではなく、ゴロゴロゴロってスーツケースを引きながら、二往復目の道を歩き始めました。

ああ、
すぐに動いてよかったな。
DoCoMoショップ見つかって、しかもそんなに並ぶところでなく、
ほんとよかったな、って思って歩いていました。

そして、会場について辺りをキョロキョロしていると、みた顔の人がやって来て。
「お久しぶりです」
「ご無沙汰していました」

そんな会話が始まっていきました。

そして、研修が始まると…

「あ! 昨年も、会ったとこある人がいる!!」

こうして、尼崎の「ピアサポーターステップアップ研修」は始まっていきました。
そして、研修が始まっていくと…

「あ! この人も、昨年会っている! あっ この人も、昨年会っている!!」

って、思い出し…

新しい「出会い」と、
そして、「再会」と。

その両方がある場でした。

出会いは希望を感じますし、
再会は、その希望の光が現実のものとして面になっていく…そんな感覚が僕のなかにやってきて…
広い希望の場が出来ました。

また、来たいなって思いました。

また行きたいなって思っています。

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前回僕は、「出会い」ということを書きました。
今回は、「再会」について書こうと思っていました。

そして、でも「再会」に行く前に、その前に大変だったこと、そして、サポートを求めてみたら、ほんといい人が現れて助けて貰ったことを書き始めたら、そっちが長くなってしまいました。

僕ら、いろいろあるけれども、「あきらめないこと」
そして、
必要な時には、「サポートを求める」ことが次の時間を作っていくということ。それで、未来にある約束は、叶うんだな。

そして、約束した未来の時間には、
「再会」というものもあり…

人は、「出会い」で可能性を知り、
「再会」で“可能性を現実にしていくんだな”

そんなことを思った、2018年1月。
僕は、44歳で、、今年、最初の旅でした。

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増川ねてる氏
増川ねてる
1974年、新潟県小千谷市生まれ。アドバンスレベルWRAPRファシリテーター。

2007年より、WRAPファシリテーターとしての活動を始める。紆余曲折ありながらも、現在は、精神科の病院(都立松沢病院、埼玉県立精神医療センター等)や福祉施設を中心に、WRAPワークショップや研修等を、全国各地で行っている。2011年には、約7年受給していた生活保護を抜け、自立。「誰でも、何処からでもリカバリーできる世の中を! 」と講演活動なども行っている。2014年には、一般社団法人チーム医療フォーラム主催の「MEDプレゼン2014プレゼン」https://youtu.be/nmHWTvsxQN4に参加。他科との連携を模索中。またWRAPのみならず、「U理論」の実践と普及啓発にも力を入れている。

……
NPO法人東京ソテリア・ピアサポーター、

認定NPO法人 特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ 理事
https://www.comhbo.net/
NPO法人精神科作業療法協会・POTA 理事
http://www.pota.jp/

明治大学 社会イノベーション・デザイン研究所 客員研究員
……

幸せを感じるのは、文章を書いているとき、ファシリテーションをしているとき、好きな人といる時で、
著書に「WRAPRを始める!」(精神看護出版・共編著者)、
「シリーズ:こころの科学増刊メンタル系サバイバルシリーズ 私はこうしてサバイバルした」日本評論社2017(一部執筆)
「Q&Aでわかる こころの病の疑問100当事者・家族・支援者に役立つ知識」中央法規2014(一部執筆)等がある。