私が障害とうまく向き合えるようになるために大切だったこと(全3回)

第3回 障害と向き合う中で学んだこと

黒木 啓(仮名)

[会社員]

双極性障害

黒木啓(くろぎひらく:30歳)さんは10代の頃に双極性障害を発症。以来、この病との壮絶な戦いを繰り広げてきた。その中で学んだことや感じたことなど――貴重な体験の記録を短期集中連載でお届けします。

 

自分と向き合う作業時間であり続ける読書

 

 幼い頃から読書が好きでした。しかし今の読書習慣があるのは、大学で卒業論文を書き、自分がいかに勉強してこなかったかを知ったおかげです。精神障害を抱える人ほど読書をした方がいいと私は思います。なぜなら、読書とは自分と向き合う作業だからです。自分を見つめ直すきっかけになるだけでなく、自分を冷静に観察するための方法や考え方、問題を解決する手段なども読書から学ぶことができます。自分で考える習慣のある人は、精神障害を患うことになっても、障害とうまく付き合えるように必ずなると私は思っています。

 

障害者だからこそ仕事をすることが大切

 

 私は現在、障害者用特例子会社で事務の仕事をしています(厳密には在籍しているものの休業中ですが。春頃には復帰予定)。今年の春で5年目になりますが、私にとって就職らしい就職はここがはじめてでした。やはり仕事というものは人間を成長させるものだなと実感しています。何より自分にもフルタイムの勤務ができて人並みに業務をこなすことができたということは大きな自信に繋がりました。仕事と言っても、会社に就職することがすべてではないと思います。在宅やフリーランスなど、働き方は様々ですし、家事や育児も立派な仕事です。しかし、どのような働き方でも、できれば複数の他者と交わることが大事だと私は思います。人との交流の中でしか学べないことや得られないことが、精神障害者であっても、いや精神障害者だからこそあると私は思っています。自分が経済的に自立するためという目的からのスタートでよいと思います。働く中で、仕事の先にいる他者の存在に気づき、他者のために働くという視点を持てたことが、何よりの財産だと思っています。

 とは言え、障害者です。仕事以前に状態が安定することが最優先ですし、仕事をする際もできれば自分の障害の特性を理解し、援助の手を差し伸べてくれる環境で働くことが望ましいでしょう。私も障害者用特例子会社で働いていて、たくさんの配慮をしてもらい、支えられて今の自分がいます。無理なく障害と付き合いながら働き続けるために、自分の障害を自分で知り、いっしょに働く人にも知ってもらい、助け合って仕事をしていくことが不可欠でしょう。そのときの自分にできることをできる時間や環境の中で少しずつやっていったらいいと思います。

 

さいごに

 

 今までたくさんの方にお世話になってきました。しかし、いついかなるときも精神的に私の味方であり支え続けてくれたのは、私の場合、母でした。自分のことのように私のことを考え、献身的であり続けてくれたことが今は分かります。世の中には私のように支えがない人もたくさんいるでしょう。その中で私は恵まれているほうだと自覚しています。でも、できるならみなさんに支えてくれる人と出会ってほしい。それは親に限りません。兄弟姉妹や親戚など血縁関係の人たち、友人、地域のスタッフ、医療関係者、勤務先の上司など、自分が生活している中で支えたり支えられたりしている人が必ずいるはずです。その人に、困っているときは困っていると訴えてみましょう。それには、血縁関係のある人や友人ではなく、支援する専門スタッフの方がいいのかもしれません。きっと、あなたの力になってくれるはずです。自分の依存先をたくさん作っておきましょう。そのことが自分が生きやすい環境を作ることに他なりませんし、周りと助け合いながら生きていく誰もが生きやすい社会を作ることにも繋がっていくはずです。

 


黒木啓
黒木 啓(くろぎひらく:仮名)、30歳。
地方在住会社員。10代の頃にうつ病を発症。
20代の頃に双極性障害Ⅱ型と診断される。
1児の母。自身の体験を書くことで
悩みを抱える人たちとつながりたいと考えている。

 


 


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