うつ病でLGBTな僕の生活と意見[第8回]

強迫性障害を患っていた頃④ 病院に行くための準備に動き出す

ますみゆたか氏

[にじのこころ代表]

携帯

精神疾患を患い、かつLGBT(ゲイ)である──この社会では二重の意味でマイノリティでありながら、同胞たちのために自助グループ「にじのこころ」を事実上、一人で運営するという孤軍奮闘ぶりをみせる、ますみゆたか氏。LGBTコミュニティでさえ「メンヘラお断り」という理由でなかなか受け入れられないという彼が、日々の雑感を連載で綴ります。

 

ある朝、ついに限界が来た

確認行為は日を追うごとにひどくなり、自分でもいったい何をしているのかわからなくなっていました。戸締まりなどを確認するだけでなく、もう自分の目や指で確認したかどうかも怪しくなり、戸締まりそのものだけでなく、それらを確認した事を「確認」したいという不思議な状態になりました。

最初の頃は携帯電話のカメラ機能を使っていました。玄関の鍵を閉めた時の動画を撮ったり電気のスイッチが切れている事がわかるように写真を撮ったりして、心配になったらそれらを見て安心を得ていました。しかし確認する手順が増えていくと撮影する時間もなくなりました。また撮影したデータが手元にあるために、仕事中などもその動画や画像を見て確認したいという気持ちになるので、撮影する方法は途中で辞めざるを得ませんでした。

家を出るまでに電気やガス、戸締りなどの確認をするためにかなりの時間が必要となり、1時間程度は早めに起きないといけないのですが、様々な不安が頭の中で途切れる事なく騒ぎ続けて睡眠がしっかりと取れず、精神的にさらに不安定になり一日中頭がぼんやりとしている状態でした。

ある朝、私はついに限界が来てしまい目が覚めても体を起こせなくなり、その日は風邪という事で仕事を休む連絡をしました。今日はせわしなく戸締まりなどの確認をしなくてよいのかと思うと、心が少し軽くなり久しぶりに体の隅々に血が通ったような気がしました。しかし風邪を理由に長く休めるわけもないので、その間に何か事態が悪くならない方法はないかと考え始めました。

起きられないくらいの状態になって自分は間違いなく病気だと確信した私は、うつ病になった数年前に病名だけは知っていた「強迫性障害」ではないかと思いました。自分の行動がおかしいと感じてはいましたが、精神疾患で通院していた頃に戻るのが怖くて認めたくなかったのかもしれません。

 

再びノートに不安を書き出してみた

ネットで調べてみると強迫性障害の様々な例が出てきて、戸締まりなどを確認をするだけで多くの時間を費やしている私の行動も書かれていました。しかし様々な項目を見ていると自分が気にしていなかった内容も見る事となり、不安で病気の事を調べているのにさらに不安に陥りそうでした。

そして病気であったとしてもこれからどうしようとまた悩み始めました。これから病院に行くとしても外出しなくてはいけないからです。調べても強迫性障害の症状やメンタルクリニックなどの情報は多くありましたが、確認行為で困っている人の細かい日常についての情報はなく、どうしたらスムーズに外に出てクリニックに行けるのかという事は見つけられませんでした。もしかしたら時間をかけて調べれば何か良い方法があったのかもしれませんが、落ち着いて調べる時間の猶予はないと焦っていたため確認できませんでした。

うつ病で通院していた辛い時期を思い出しはじめて憂鬱になっていたのですが、ふと思い出したのが以前こちらのサイトにも書いた「ノートに不安を書き出す」という行為です。

>うつと付き合う中で私が実践したこと②

うつ病で通院してから数年後、気分がとても落ち込み何をしてもやる気が起きない時に実践したものです。

もしかしたらこの毎日の確認行為を少しでも改善できる手がかりがあるのではないかと思い、
まず心身の負担になっている毎日の行動を書き出してみました。儀式のようなこだわりの多さ、そして毎日の慌ただしさに自分を完全に見失っていた事に気付きました。

鍵もガスの元栓も一度確認すればどんなに長時間見ても変わらないはずなのにどうして不安になるのか。紙に書いた自分の行動を一度じっくり見た後に、私は病院に行くための準備を始めようと動き出します。

 



ますみゆたか
ますみゆたか 
セクシュアルマイノリティと精神疾患の自助グループ「にじのこころ」代表
見た目でわからない生きづらさを抱える人達の繋がる場を作る活動をしている。
最近の心のテーマは「しずかに、しぶとく、しなやかに。」
 
 



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