うつ病でLGBTな僕の生活と意見[第2回]

うつと付き合う中で私が実践したこと②

ますみゆたか氏

[にじのこころ代表]

うつ
 

精神疾患を患い、かつLGBT(ゲイ)である──この社会では二重の意味でマイノリティでありながら、同胞たちのために自助グループ「にじのこころ」を事実上、一人で運営するという孤軍奮闘ぶりをみせる、ますみゆたか氏。LGBTコミュニティでさえ「メンヘラお断り」という理由でなかなか受け入れられないという彼が、日々の雑感を連載で綴ります。

 

思考を一度「外」に出す

前回はガムテープで掃除をする事で心が整ったという事をお伝えしましたが、今回は私が取り組んだ「ノートに思いを書き出して心を整える」というものをご紹介したいと思います。

何もする気が起きず部屋で寝込むという状態からは抜け出したものの、ふとした事で不安に襲われる日が続きました。特に外出をすると周囲の人たちが何だか楽しそうに見えてしまい、それと同時に人を羨んでいる自分が恥ずかしく、さらにふさぎ込んでしまうという状態でした。

そうした鬱々とした気持ちに支配されている中、ある日ふと自分の中にある不思議な思考に気づきました。病んでいると人から思われたくないと感じつつ、精神疾患の苦しさは見た目でわかってもらえないから辛いと考えたり、見た目でわからないと思っているのにも関わらず、他人の事は見た目で楽しそうと決めつけていたのです。

それに気づいた時に自分の深い所に風が入った気がしたので、この矛盾した考えとそれに気づいた瞬間を書き留めておこうと思いつきました。家にあった使いかけの大学ノートにその気づきを書いてみると、自分の歪みのようなものを改めて感じたので、そこから頭の中にあるモヤモヤとしたものを苦心しながら文字にしてみました。

得体の知れない漠然とした不安も書き出してみると、どういう事が原因なのかが何となくわかるようになってきました。それがすぐに解決できるようなものではなくても、ただノートに書くだけで心なしか気持ちが楽になるので、その日から思いついた事や不安な事などをたくさん書き出すようになりました。

うつ病の時は自分の事を落ち着いて考えるエネルギーが低下しているので、不安や悩み、やるべき事など様々なものを頭の中だけで動かして片付けようとしても、かえって何をどうしてよいのかわからなくなります。

一気に部屋を片付けようとして逆に散らかってしまい、何だか収拾がつかなくなるという経験がある方も多いと思いますが、掃除をする時のようにまずは不要なものかどうかを確認して、いらないものを捨てる作業をして物の数自体を減らす事が大切です。

思考も一度自分の中から外に出して、不安に感じているものが何なのか、それは落ち着いて取り組めば解決できるものなのか、今の自分ではどうしようもできないものなのかなど、ひとつずつに切り分けて掃除をしていけば物で一杯だった頭の中にスペースが生まれるのではないでしょうか。

 

ノートは「何を書いても自由な場所」

勿論ノートに書いたからと言ってすぐに不安が解消されるわけではないのですが、私が取り組んだノートに書く方法を簡単に3つ挙げてみます。

1.日記ではなくノートで

すでに日付が入っている日記形式のものだと、何も書かない日があるとそこだけぽっかり空いてしまい何だかそこが妙に気になりそうだったのでノートにしています。書ける日だけ書こうというくらいの思いで始めてみるのが良いと思います。

2.表現方法は自由で

ぼんやりとした不安を言葉として書き出す事は慣れるまで難しいと思います。なので「何となく不安」とか「どうしてそんな言い方されなきゃいけないんだよ怒怒怒」「あああ辛いよーあああ」など、感じた事をそのまま書いて構いません。

字で表現できない場合は絵や線で表現しても良いと思いますし、文字も丁寧に書く必要はなく殴り書きでも大丈夫です。その日その時に自分が思っている心配な事をまずは排出するという習慣をつけていきます。どうしてもその時に書き表せない、書く気が起きなければ無理にやる必要はありません。

3.可能なら手書きで

うつ病の日常をブログやSNSに書く方もいらっしゃると思いますが、少なからず人に見られるという事を意識してしまい本意ではない表現になったり、書いた事に対して反論や批判があって心が傷ついたり、コメントがついたのでそれに返信しなくてはというプレッシャーに見舞われた経験があるのではないでしょうか。

勿論ブログやSNSによって同じように辛い思いをしている人と繋がりを持てるなど良い所もたくさんあります。なのでそれらと別に「何を書いても自由な場所」であるノートがあった方が気持ちが楽になると思います。例え文章が乱れていても汚い言葉を書いても、ノートは自分だけしか知りません。そういう自由な場所がひとつあるだけでも違ってくると思います。

先に書いたように文章でなくても構わないですし、絵や記号、線をグルグル書いても大丈夫なので、文字をタイピングするより手書きの方がいろいろな表現方法ができると思います。また字の大きさや書いた時のスピード感、筆圧などでも文の内容とは別の情報として心の状態が表れるのも良い所だと思います。

文字のみで自分の気持ちを表現する事ができれば、パソコンのメモ機能などに書いても大丈夫です。

上の3つのポイントを踏まえてノートに書くのを続ける事で、その日に感じた嫌な思いや要因などを文字にするまでのスピードがあがってきます。要因がはっきりしてくると、それにどう対応するのがよかったのか、またこれからどうすればよいのかを落ち着いて考える事ができるようになります。

気持ちを文字にできるようになると、自分の漠然とした思いを他の人に伝える力もついてきます。ぼんやりとして得体の知れない心配事がどういうものなのかを具体的に捉える事によって、それを解消するための道筋を作れるようになったり、誰かに協力してもらう際にわかりやすく説明できるようになります。なので通院前にノートを振り返ると、お医者さんに自分の精神状態を伝えやすくなります。

例えば手の届かない背中の痒い場所を誰かに伝えて掻いてもらおうとする時、皆さんはその痒みのある所をどのように説明するでしょうか。自分では何となくわかっているものでも、他の人にその位置をピンポイントで伝えようとするとかなり難しいです。でも伝えなければ痒みは消えずストレスになります。

そんな時は痒みを解消するためにきっと文字や言葉など様々な方法を駆使して相手に説明をすると思います。黙っていてはきっと伝わらないでしょうし、伝えるためには工夫が必要となります。

ひたすら気持ちを書くだけでもかなりスッキリしますが、それを続ける事で自分の心を的確に表現するトレーニングにもなります。ノートとペンだけでどこでもできるので始めやすいと思います。この方法で不安を体の外に出して心を整理し、皆さんが少しでも身軽に過ごせるようになれば幸いです。

 



ますみゆたか
ますみゆたか 
セクシュアルマイノリティと精神疾患の自助グループ「にじのこころ」代表
見た目でわからない生きづらさを抱える人達の繋がる場を作る活動をしている。
最近の心のテーマは「しずかに、しぶとく、しなやかに。」
 
 



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