アート制作に出会い、
私は生まれ変わった

漆嶌知子さん

[アーチスト]

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エイブルアート・カンパニー(http://www.ableartcom.jp/)というユニークな組織がある。障害のある人たちのアート作品を公募で募り、選出された作品の作者を「カンパニー・アーティスト」(登録作家)と位置付けて、企業とのタイアップにより彼・彼女らのアート作品を商品化に結び付ける──障害者支援の新しい形を提案するオーガニゼーションだ。漆嶌知子さん(うるしま・ともこ、38)は、そのカンパニー・アーティスト94人のうちの一人。精神障害と戦いながら、切り絵を主とした洗練されたデザインを生み出し続けている。「アート制作と出会って、人生が180度変わった」という彼女のポジティブな生き方とは?!

一つの世界像が制作過程で立ち上がる

漆嶌さんの作品には、鳥や猫、草花といった命あるものを題材にとったシンプルなデザインが多い。シンプルな空間表現は、構図の取り方が難しいといわれる。ほんの少しの配置のズレが全体のバランスを崩してしまったりする。漆嶌さんの作品は素人目にもその構図の取り方が絶妙で、非常に洗練された印象を受ける。
「制作するときには、切り絵を台紙に貼る位置が“ここ”という風に見えていますね。そういうときには(作品の背景をなす)風景全体も見えています。そこにある匂いまで感じることができるのです」
一つの世界像が作品の制作過程で自然に立ち上がる。アーティストならではの優れた資質である。

そんな漆嶌さんがアート制作と出会ったのは3歳のとき。引っ込み思案だった彼女を心配した母親が、地元の造形教室に通わせたのがきっかけだったという。

「嬉しかったのは、作品をつくると母親がそれを“お菓子引換券”などの架空のおカネと換えてくれたこと。そこで私は商売に目覚めました(笑)」

楽しい創作の時間──それは小学校高学年まで続いた。しかし、中学に入る頃になると、「英語の勉強についていけないと後々困るから、英会話学校に行ったら」という母親の助言に従い、アートからは一旦、離れることになった。ただ、中学は過酷な競争社会で、あまり良い思い出がないという。地元の商業高校に進み、「わからないことはわからないと言っていいんだ」と知って、やっと少し心の余裕を持てるようになった。高校卒業後は職業訓練校の木工技術科に進み、家具職人になることを目指した。やはり、先天的にモノづくりが好きだったのだろう。10歳以上も年上の男性の多いクラスでは「落ちこぼれていました」というが、木材加工会社でのアルバイトなど、自分の資質にあった楽しい体験を得ることもできた。しかし、この頃から漆嶌さんは少しずつ精神に変調をきたすようになった。

そして、22歳で統合失調症と診断された。そこからの道のりがいかに苦難に満ちたものであったかは、同じ病を抱える筆者には容易に想像がつく。したがって、詳しく訊ねることはしなかった。

「精神科病院では、電気ショック療法を4回受けました。その後遺症で、色の識別ができなくなってしまった」
飄々とした自然体で語る漆嶌さんは、そんな過酷な体験を経てきているようにはとても見えない。やはり、アート制作との再会が彼女を変えたのだろうか。それ以前の彼女の様子については知る由もないが。

障害を抱えていても人は輝ける

アート制作との再会の機会は、ひょんなきっかけから訪れた。
「その頃、趣味で裁縫をやっていて、自作の手提げ袋などを抱えて色んなところに飛び込み営業をしていたのです。それでたまたまアーツ千代田3331(エイブルアート・カンパニーも入居する複合型アート施設:東京都千代田区)を訪れ、エイブルアート芸術大学を紹介されたのです」

エイブルアート芸術大学(A/A芸大)とは、エイブルアート・カンパニーを運営する3つのNPO法人のひとつであるエイブルアート・ジャパンが運営をサポートする美術学校。現代美術家の中津川浩章氏をファシリテーターとし、障害のある人をはじめ、誰でも参加することのできるオープンなアートスクールだ。
漆嶌さんは早速、A/A芸大に通うことにした。その選択が、彼女の人生を大きく変えることになる。

「A/A芸大に通うようになって、“障害を抱えていてもこんなに人は輝けるんだ”ということを知りました。それまで通っていた作業所などとは全然、雰囲気が違う。先生をはじめ、周りの人たちもやさしい。通うことが楽しくて仕方ありませんでした」

漆嶌さんは、長らく離れていたアート制作に没頭するようになった。朝3時半に起床し、気分が乗ると数時間を創作に費やす。その中で、創作手法も初期のペンや色鉛筆を用いた描画から、自然に独特の切り絵に変わっていった。漆嶌さんは、自分のスタイルを確立した。
そして、A/A芸大に通う中で、今から2年前、漆嶌さんはエイブルアート・カンパニーの公募に出品し、はじめての応募で見事カンパニー・アーティストに選出された。そのときの心境を、漆嶌さんは「うれしいの一言」という。人は他者の承認を必要とする生き物だ。障害を抱えながらも、アートという得意分野で大きな承認を得た漆嶌さんの喜びは、何物にも代えがたいものだっただろう。

「切り絵というのは、誰にでもできる手法です。絵というのは、誰にでも描けるのです。ものを創る喜び──それを多くの人に伝えていきたいですね。同時に、私の作品を見てくださる方々に“ほっと”した気分になっていただけたらと思っています」

漆嶌さんには伝えたいことがたくさんある。“描くということ”について、言葉にしたいメッセージが山ほどあるのだ。思いが溢れたように、こう続ける。
「描くことは、私に機会と力を与えてくれました。そう、可能性というのはどこにでも・なんにでも秘められているのです。才能のある/なしは問題ではありません。才能に満ちた絵を描くことは、私にとって目標ではなく、希望なのです。私はアートを通じて精神障害を乗り越えてきました。そしていま、与えられたチャンスを生かして、一枚の絵から社会とのつながりを広めていきたいと思っています」

いま、漆嶌さんをめぐる展開は急だ。彼女のデザインは携帯電話ケースや服飾、また金融機関の年賀状などに採用され、次々と商品化されている。周りの見る目も変わった。都内の共同住宅で二人暮らしをする母親からは「障害を持って、あなたはかえって生きやすくなったんじゃない」と言われているそうだ。また、障害を心配していた姉は、作品が商品化されたという報告を受けて、大変喜んでいるという。
そして、今年4月には初の個展の開催も控えている。過去の作品の整理や新作の制作に忙しい毎日だが、「あまり気負わず、意気込みすぎずにやっていきたい」と漆嶌さんはいう。自然体の姿勢に揺るぎはないようだ。

アート制作に出会う前と後とでは、なにがいちばん変わりましたか?──そう尋ねると漆嶌さんは、
「自信が持てるようになった、やりがいが生まれた、ストレスがなくなった」
と3つのセンテンスで応えてくれた。
その明るい表情が、彼女の充実を物語っていると感じた。

 

 


エイブルアート・カンパニー

エイブルアート・カンパニー


エイブルアート芸大

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漆嶌知子ART WORK

 


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