うつ病でLGBTな僕の生活と意見[第3回]

精神疾患が呼び寄せる孤独の辛さ

ますみゆたか氏

[にじのこころ代表]

うつ
 

精神疾患を患い、かつLGBT(ゲイ)である──この社会では二重の意味でマイノリティでありながら、同胞たちのために自助グループ「にじのこころ」を事実上、一人で運営するという孤軍奮闘ぶりをみせる、ますみゆたか氏。LGBTコミュニティでさえ「メンヘラお断り」という理由でなかなか受け入れられないという彼が、日々の雑感を連載で綴ります。

 

うつと孤独の負のスパイラル

今年1月、イギリスで孤独担当大臣のポストが新設されるニュースがあり、その内容は大変衝撃的なものでした。

イギリス政府の調査でわかったのは、人口約6500万人のうち900万人以上が孤独を感じ、約20万人の高齢者が1か月以上家族や友人と会話をしていないというのです。また孤独がイギリスの経済に与える影響は、およそ4.9兆円にものぼるとしています。

参考:ハフィントンポスト『「孤独担当大臣」とは? 新設されたイギリス、「孤独」の国家損失は年間4.9兆円』

 

孤独というものが個人の感じ方というだけでなく、国にとっても深刻な問題であると考えた事がわかります。

このニュースを知り、自分が精神疾患になってひどく孤独を感じた事を思い出しました。

自分がうつ病である事を隠して人と話しているとつい無理をしてしまいます。すると心の負担が想像以上にひどく、家に帰ってから余計に寂しさを感じ、落ち込みや不安といった症状が強く出てきます。人と会いたいと思って出かけてもその揺り戻しでさらに体調が悪化し、それが強い孤独感を生んでしまう、そんな経験が何度もありました。

他の人がとても眩しく充実しているように見えてさらに自分の孤独を強く感じる、そんな悪循環に陥りました。時間が流れていく中で自分だけが何も成長していないように感じ、歩く事もできなくなりしゃがみ込んでいる横を多くの人達が軽快に駆け抜けていく、自分だけが何周も周回遅れになっている感覚でした。元気に見える人が羨ましいし、そう思ってしまう自分が情けなくてさらに嫌いになります。

もしそのまま孤独に捕らわれて、誰にも気に留めてもらえない事が長く続いていれば、私は自分の人生を自分の手で終わらせるという手段を取っていたかもしれません。

孤独と精神疾患の間に入り込んでしまうと、その間を行ったり来たりしながら落下していくような気がします。寂しさで心を病むとその症状により外出できなくなり、それは人と交わる機会を減らし、仕事ができなくなる事で社会との繋がりや自分が何かの役に立っているという実感がなくなったと感じます。そこに貧困などが絡み心身の具合がさらに悪くなるという恐ろしい悪循環がここにも待ち受けています。

 

“違い”を排除する「奇妙な秩序」

イギリスの場合、障害者は4人に1人が日常的に孤独を感じているという調査結果が出ましたが、日本ではさらにその割合が多いように肌で感じます。昨今の障害年金や生活保護を受給している人へのバッシング、相模原の障害者施設で起こった無差別殺傷事件、そして昨年末に起きた寝屋川での監禁死事件などのニュースを聞くとそう思わずにはいられません。

様々な生き方がある事を認めない、人と違う事は恥ずべきという風潮が蔓延しているため、障害がある事も孤独である事も言いづらいのではないでしょうか。また「障害などで配慮してもらっているのだから、さらに孤独を何とかしてほしいとは言えない」と萎縮してしまう人もいるはずです。

そこには、息苦しい今を生きる人達の心の奥に「自分はこの状況に耐えて文句も言わずに我慢して過ごしている。だから少しくらいの事で苦しいとか辛いとか言っている人は許せない」という声が集まって、自分達と違う言動をする人を排除する「奇妙な秩序」があるからだと思います。実際に生きづらさを感じて声を上げただけでも、それが身勝手でわがままだと思われてしまうのです。

落ち着いて考えれば、そんな勝手な秩序を成立させてしまえばもし自分が病気や障害を負ってしまうと途端に苦しめられる立場になる可能性があるのですが、今を生きるのに精一杯であればあるほど想像力は働かず、自分より得をしているかのように見える存在が許せなくなるのです。

人は寂しかったり困ったりすれば、自分の非常ボタンを押してサイレンを鳴らし、泣いたり声を出して「苦しいから助けて」と伝えなければなりません。本当ならばそうなる前に誰かが気づく事ができる世の中が望ましいのですが、誰もが自分の事で必死だからSOSを最大音量で出さないとわかってもらえません。

でもその大きなサイレンさえも「うるさいから止めろ」「その程度で鳴らすな、甘えるな」と言われます。そうしてもうボタンを押せなくなり、助けの声も届かないと絶望してしまいます。

孤独とは人から楽しみや健康、笑顔、他人への思いやり、これからの世界を良くしようと思うアイデア、そして命まですべてを奪っていくのです。

10年ほど前の調査ですが、経済開発協力機構(OECD)加盟25か国を対象に行われた15歳の意識調査で、日本は孤独を感じる子どもの割合が先進国で一番高い状態でした。その日本で若年層の自殺率が高いのも決して無関係はないような気がします。

出典:
先進国における子どもの幸せ
国立教育政策研究所・国際研究・協力部(翻訳)2010年3月
(2007年2月14日にユニセフ・イノチェンティ研究所が公表した研究報告書の全訳)

厚生労働省 平成29年版自殺対策白書 年齢階級別の自殺者数の推移

最初に書いたイギリスの調査では、孤独は1日にタバコを15本吸うよりも害を及ぼすとされています。孤独を紛らわすために過度の喫煙や飲酒をしたり、食生活や睡眠など生活リズムが乱れたりする事も考えられるので、想像以上に人の健康全般に悪影響があると思います。

孤独やうつ病などの精神疾患、自殺などを個人の問題や家族で解決すべきという事で終わらせていたために、ここまで生きづらさが垂れ込める国になってしまったのではないでしょうか。

孤独担当大臣の設置により、人が本当に大切なものとは何かをこの国に気づかせるひとつのきっかけになればと思いますし、詳細な調査とその結果を受けての対策を講じなければ、誰もが生き心地の良い社会は訪れません。

これを読んでいる方が、自分の孤独や生きづらさ、誰かの孤独に思いを馳せるひとつのきっかけになればと思います。

 


ますみゆたか
ますみゆたか 
セクシュアルマイノリティと精神疾患の自助グループ「にじのこころ」代表
見た目でわからない生きづらさを抱える人達の繋がる場を作る活動をしている。
最近の心のテーマは「しずかに、しぶとく、しなやかに。」
 
 



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