ナルコレプシーという奇病をご存じだろうか。直木賞作家の故・阿佐田哲也氏が罹患していたことで知られる病であるが、昼間の耐えがたい眠気や睡眠麻痺、入眠時幻覚などを主症状とする慢性疾患である。現代医学では病理は解明されておらず、根本的な治療法もない。このナルコレプシーに罹患しながら同じように精神・神経系の病を患う人々のピアサポーターとして活躍、それで見事に生計を得ているのが増川ねてる氏(43歳)だ。病との共存を実現しつつ、自らのワークスタイルを作り上げた同氏。だが、ここに至るまでの彼の人生は筆舌に尽くしがたい苦難の連続だった。その辛苦に満ちた半生の回顧談を、インタビュー形式でまとめてみた。
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病気を拠り所とせず
独自の言語や世界観を持った人たちとの“異文化コミュニケーション”がなにより楽しい
アスぺルガー症候群(以下、AS)の臨床像が一般に認知されるようになったのはここ数年のこと。それ以前、ASを患う人たちは行政にも、また病院でさえもほとんど相手にされず、制度に乗ることも許されないまま半ば放置されている状態だった。そんな状況下、障害者施設の支援員として知的障害を持つ自閉症児・者への支援に取り組む中でASを患う人たちの存在を知り、彼らのための当時はまだほとんどなかった自助グループ「アスペの会・東京」を立ち上げたのが柏木さん。約20年間におよぶ活動の軌跡を振り返っていただいた。